「絵を描くことって、子どもにとって本当に必要なの?」
「勉強や運動の習い事のほうが、将来役に立つのでは?」
そんなふうに思ったことがある方もいるかもしれません。
では、子どもが絵を描くことには、どんな意味があるのでしょうか。
私は、絵を描くことは「絵が上手になるため」だけではないと思っています。
むしろ、絵を描くという行為の中には、これからの時代を生きていく子どもたちに必要な力が、たくさん詰まっています。
「自由に描いていい」からこそ、考える
学校の勉強には、問題と答えがあります。
「1+1=?」
「この漢字の読み方は?」
正しい答えを見つけることは、とても大切な学びです。
一方、真っ白な画用紙の前には、決められた答えがありません。
「何を描こう?」
「どんな色にしよう?」
「ここには何が必要かな?」
「もっと面白くするにはどうしたらいい?」
自分で考えて、自分で決めて、自分で形にしていきます。
自由に描くということは、実は「何も考えなくていい」ということではありません。
むしろ、自分で考えなければ何も始まらないのです。
だからこそ、絵を描く経験は、アイデアを生み出す力や、試行錯誤しながら答えを見つける力につながっていくのだと思います。
「私はこう思う」と、自分の考えを表現する
絵には、ひとつの正解がありません。
同じ「魚」を描いても、青い魚を描く子もいれば、虹色の魚を描く子もいる。
海を描く子もいれば、宇宙を泳ぐ魚を描く子もいる。
どれが正解で、どれが間違いということではありません。
「私はこうしたい」
「私はこう思う」
「私はこれが好き」
自分の感じたことや考えたことを、自分なりの方法で表現する。
この経験を積み重ねることで、少しずつ『自分の考えを持ち、それを表現する力』が育っていきます。
これからの社会では、誰かが用意した答えを覚えるだけではなく、自分で考え、自分なりの答えをつくり、それを相手に伝える力がますます大切になっていくでしょう。
「何を描くか」だけではなく「何を描かないか」
絵を描くとき、子どもは無意識のうちにたくさんの選択をしています。
「この色にしよう」
「ここは大きくしよう」
「これは描かなくてもいいかな」
「ここをもっと目立たせよう」
つまり、絵を描くことは「足していく作業」だけではありません。
何が大切なのか。
何を残して、何を省くのか。
自分で考えながら選んでいく作業でもあります。
これは、ものごとの本質を見つけたり、優先順位を考えたりする力にもつながっていきます。
勉強ではなく、絵画教室に通う意味
もちろん、勉強は大切です。
知識を身につけることも、計算する力も、文章を読む力も、子どもたちが成長していくうえで必要なものです。
でも、子どもに必要なのは「知識」だけではありません。
自分で考える。
やってみる。
失敗する。
もう一度試してみる。
自分なりの答えを見つける。
そして、「私はこう思う」と表現する。
絵画教室では、こうした経験を、楽しみながら繰り返すことができます。
だから私は、絵画教室は「絵を上手にするためだけの場所」ではないと思っています。
自分の頭で考え、自分の心で感じ、自分の手で答えをつくる場所。
それが、絵画教室の大きな意味のひとつだと思います。
真っ白な画用紙の前で、答えを出せるのは自分だけ
真っ白な画用紙を目の前にすると、少し戸惑うことがあります。
「何を描けばいいかわからない」
「これで合っているかな?」
そんな瞬間もあります。
でも、そこには先生から与えられた正解も、友達と同じにする必要もありません。
最終的に、
「私はこれを描く」
と決められるのは、自分だけです。
そして、一度描いてみたら、
「やっぱり変えてみよう」
「もっとこうしたい」
と、また自分で考えることができます。
その繰り返しの中で、子どもは少しずつ、『自分で答えをつくっていいんだ』という感覚を身につけていきます。
私は、これこそが「自由に絵を描く」ことの大きな価値だと思っています。
絵を描くことは、未来の自分をつくること
絵を描いた経験が、そのまま将来の仕事に直結するとは限りません。
でも、
「自分で考えた」
「自分で選んだ」
「失敗してもやり直した」
「自分の考えを形にした」
という経験は、きっと未来のどこかで子どもたちの力になります。
正解のない問いに出会ったとき。
新しいアイデアが必要になったとき。
誰かと違う意見を持ったとき。
何かを一から生み出さなければならないとき。
そんな場面で、
「自分で考えてみよう」
と思える力。
それを、アートを通して育てていきたい。
それが、アトリエくるくるが「絵を描くこと」を大切にしている理由です。
上手に描けなくても大丈夫。
人と違っても大丈夫。
迷っても、失敗しても大丈夫。
真っ白な画用紙の前で、自分だけの答えを探してみよう。
その一枚一枚が、子どもたちの「考える力」「感じる力」「生み出す力」につながっていくと、私は考えています。


